9/16(金)〜10/6(木) 料金:1800円均一
この圧倒的な美しさと可笑しさと感動! 混沌の時代、いまこそ80/90年代ゴダールを!
この特集のためだけに日本上映権利切れの作品6本を、仏・ゴーモン社より買い付けました。難解と言われることもあるゴダール作品ですが、あえていま観るなら、その映像と音響をただ浴びるように感じてみてください。
Sauve qui peut (la vie)
1980年/87分/フランス、スイス、ドイツ、オーストリア/カラー
◎脚本:アンヌ゠マリ・ミエヴィル、ジャン゠クロード・カリエール ◎撮影:ウィリアム・リュプシャンスキー、レナート・ベルタ ◎音楽:ガブリエル・ヤレド
◎出演:イザベル・ユペール、ジャック・デュトロン、ナタリー・バイ
ゴダール自身が「第二のデビュー作」と呼ぶ、単独監督作としては13年ぶりの商業映画。登場人物3人それぞれの「道のり」が、〈1. 想像界〉〈2. 不安〉〈3. 商売〉〈4. 音楽〉の4部構成で展開される。本作のクレジットタイトルに「ジャン゠リュック・ゴダールによって作曲(構成)された[composé]フィルム」と書かれているとおり、物語は3人の人生゠運動が絡み合い展開する音楽のように構成されている。
Passion
1982年/87分/フランス、スイス/カラー
◎脚本・台詞:ジャン゠リュック・ゴダール ◎撮影:ラウール・クタール ◎音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン、アントニン・ドヴォルザーク、ガブリエル・フォーレ、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、モーリス・ラヴェル
◎出演:イザベル・ユペール、ハンナ・シグラ、ミシェル・ピコリ、イェジー・ラジヴィオヴィッチ
商業映画復帰作第二作目。工場で働くイザベルはある日解雇を言い渡され、工場の労働者を集めて抗議集会をする。映画スタジオでは、監督のジェルジーを中心に『パッション』と題された映画の撮影が行われており、予算の超過と細部の演出をめぐってプロデューサーと監督がもめている。工場主の妻ハンナの経営するホテルには撮影班が宿泊している。ハンナはジェルジーに好意を持ち、ジェルジーはハンナを主演女優にしたい。イザベルとジェルジーは同じように仕事への熱量を持ち、その事実はふたりに愛をもたらす。やがて工場は閉鎖され、撮影も中止となり、イザベルとハンナ、ジェルジーは戒厳令の発令されたポーランドへと車で向かう。
『マリアの本』
Le Livre de Marie
1985年/28分/フランス、スイス/カラー
◎監督:アンヌ゠マリー・ミエヴィル ◎脚本:アンヌ゠マリー・ミエヴィル ◎撮影:キャロリーヌ・シャンプティエ、ジャン゠ベルナール・ムヌー、ジャック・フィルマン ◎音楽:フレデリック・ショパン、グスタフ・マーラー
◎出演:レベッカ・ハンプトン、ブリュノ・クレメール、オーロール・クレマン
『こんにちは、マリア』
Je vous salue, Marie
1985年/72分/フランス、スイス、イギリス/カラー
◎監督:ジャン゠リュック・ゴダール ◎脚本:ジャン゠リュック・ゴダール ◎撮影:ジャン゠ベルナール・ムヌー、ジャック・フィルマン ◎音楽:ヨハン・セバスティアン・バッハ、アントニン・ドヴォルザーク、ジョン・コルトレーン
◎出演:ミリエム・ルーセル、ティエリー・ロード、フィリップ・ラコスト、ヨハン・レイセン、マノン・アンデルセン、ジュリエット・ビノシュ、アンヌ・ゴーティエ
『マリアの本』と『こんにちは、マリア』は、不可分なものとしてカップリングして公開された。
『こんにちは、マリア』は、聖母マリアの物語を現代の女性に起きた出来事として描く。当時ゴダールのミューズであったルーセルとの最後の映画である。タクシー運転手のジョゼフはマリーに好意がある。ある日、大天使ガブリエルとその姪が空港に到着し、ジョゼフの運転するタクシーでマリーのもとへ向かい、彼女に妊娠していることを告げる。誰とも肉体関係を持ったことのないマリーは動揺し、ジョゼフは彼女を疑うが、実際マリーは処女であり妊娠していた。マリーはジョゼフと結婚し、男の子を産む。数年後、男の子は「われはその者なり」と言って走り去り、マリーは「復活祭か三位一体の日に戻ってくる」と言う。
Soigne ta droite
1987年/82分/フランス、スイス/カラー
◎脚本:ジャン゠リュック・ゴダール ◎撮影:キャロリーヌ・シャンプティエ、ジャック・ロワズルー ◎音楽:レ・リタ・ミツコ
◎出演:ジャン゠リュック・ゴダール、ジャック・ヴィルレ、カトリーヌ・ランジェ、フレッド・シシャン
物語は3つのパートが交差する形で進行する。1つ目は白痴の公爵殿下が「白痴の罪を許す条件」として、その日のうちに映画を撮って首都に届け上映するよう通達されることから始まる。フィルム缶を届けるために乗った飛行機の機内の様子は、まさにドタバタ喜劇である。2つ目は、上空に対して地上を転々と移動する「個人の男」のパートであり、彼は行く先々で奇妙な状況に置かれている。そして3つ目のパートが、「レ・リタ・ミツコ」の2人、カトリーヌ・ランジェとフレッド・シシャンによるアルバム『The No Comprendo』の制作過程である。
JLG/JLG – autoportrait de décembre
1995年/62分/フランス、スイス/カラー
◎脚本:ジャン゠リュック・ゴダール ◎撮影:イヴ・プリカン ◎音楽:デイヴィッド・ダーリング、ギヤ・カンチェーリ、パウル・ヒンデミット、アルヴォ・ペルト、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン、ギャヴィン・ブライヤーズ、ヴェルナー・ピルヒナー
◎出演:ジャン゠リュック・ゴダール、ジュヌヴィエーヴ・パスキエ、エリザベート・カザ、アンドレ・S・ラバルト、ルイ・セガン、ベルナール・エイゼンシッツ
1994年5月にニューヨーク近代美術館で開催されたレトロスペクティヴ「ゴーモン映画100年」のために作られた作品。本作には一貫した物語の筋などというものは存在せず、さまざまシーンが断片的に提示される。映画のなかでゴダールは本作を「自叙伝ではなく自画像である」と述べている。自画像とは、画家が自身のみならず自身を題材に思考や表現を他者に見せようとする絵画の一形態であるといえよう。ゴダールは「JLG」についての複数の側面を自らのパフォーマンスを通して構築することで、極めて映画的な「自画像」を作り出したのである。
For Ever Mozart
1996年/84分/フランス、スイス/カラー
◎脚本:ジャン゠リュック・ゴダール ◎撮影:クリストフ・ポロック、カテル・ジアン、ジャン゠ピエール・フェドリッツィ ◎音楽:音楽:ケティル・ビョルンスタ、デイヴィッド・ダーリング、ジョン・クリステンセン、ベン・ハーパー、ジェルジー・クルターク、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
◎出演:ヴィッキー・メシカ、マドレーヌ・アサス、フレデリック・ピエロ、ガリヤ・ラクロワ
「映画」「演劇」「戦争」「音楽」の要素からなる物語。映画監督のヴィッキー・ヴィタリスは、マルローの『希望』をもとにした舞台のオーディション中に、映画『運命のボレロ』の監督を依頼される。娘のカミーユは失業中の哲学教師で、従兄弟のジェロームとともにサラエヴォでマリヴォーを上演することを考えている。周りの反対を押し切り、2人はメイドのジャミラ、そして最初は乗り気ではなかったヴィタリスとともにサラエヴォへ向かうが……。ヴィタリス、カミーユ、ジェローム、そして「モーツァルト」に共通するのは芸術の創造とその遂行にともなう困難だといえる。本作ではその問題が「戦争」と絡み合い、不条理な形で描き出されている。
Strangerのオンラインストアです。オリジナルデザインのT-shirtやマグカップ、Stranger Magazineなどの書籍や、上映作品の関連商品がオンラインでご購入頂けます。