Best New Film

最新の劇場公開作品の短評を点数式でレビュー。Strangerのスタッフが作品の感想をスピーディにお届けします。作品鑑賞のガイドとしてご活用ください。

    • みんなのヴァカンス

    • 製作年:2020年
      監督:ギヨーム・ブラック

会話による軋轢とアクティビティによる和解が繰り返し描かれる本作。仲間と揉めてはサイクリングをし、仲間とまた揉めては渓流下りをする。言語が諍いを生み出し、身体を使った活動がなぜかいつの間にかそれを調停する(怪我までさせるのに、なぜかかえってそれが和解のきっかけになる)。ストレスとリフレッシュ。同様の構造は、より大きく労働と休暇の関係性としてこの作品を取り巻いている。ヴァカンスの出来事を中心にしつつ、主人公三人の労働風景も漏れなく描かれているのが本作の興味深い点。在宅介護、スーパーの店員、トイレの清掃員と、主人公たちのさして懸命に見えない仕事ぶりが、この束の間の休暇をあくまで限りある刹那的時間として美しく照らし出している。
それにしても休暇とはなんだろうか。休暇といえども無為に過ごすことなどできないのが人間だ。恋をし、言い争い、歌い、酔い、身体を動かす。こうしてみると、休暇にこそより人間らしさの本質があるように思えるが、やはりそれは休暇でしかないのだ。この素敵な時間は休暇でしかない。ギヨーム・ブラックの作品の根底に流れる悲哀は、だから休暇の時間が宝石のように輝けば輝くほど増してくる。素敵であれば素敵であるほど哀れみが深まる休暇する人間。人間はなんといじらしい存在だろうか。

Strangerのオンラインストアです。オリジナルデザインのT-shirtやマグカップ、Stranger Magazineなどの書籍や、上映作品の関連商品がオンラインでご購入頂けます。