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最新の劇場公開作品の短評を点数式でレビュー。Strangerのスタッフが作品の感想をスピーディにお届けします。作品鑑賞のガイドとしてご活用ください。

    • ザ・ミソジニー

    • 製作年:2022年
      監督:高橋洋

霊が現れるには媒介が必要である。媒介なく現れる霊は存在しない。あるいは逆に、霊が現れるということは、それ/そこが霊界とこの世との接点=媒介になるということだ。高橋洋監督は、霊そのものだけでなく、この霊界とこの世との媒介に異様な関心を持ってきたと思う。ビデオ、写真、テープ、モニター、霊そのもの以上に、霊界がこの世との接点としている媒介の超越性に惹かれ続けているのが高橋監督なのではないだろうか。そして特に長編監督作(『霊的ボリシェヴィキ』など)において高橋監督は、霊界との媒介として物理的媒介物よりも「言葉」にその役目を負わせるという挑戦を行っているように見える。
今回の『ザ・ミソジニー』でもその媒介は物理的なモノではなく「台詞」である。女優と劇作家の主人公二人が発する台詞の一つひとつが霊界とこの世との接点となり、台本が読み上げられる度に次々に霊が現れてくる。ビデオや写真などの物理的媒介物の比ではない頻度と多様さで。なぜ「台詞」が霊界の媒介になり得るのか。媒介として機能するにふさわしい世界への怨念はどこからくるのか。それはこの「台詞」が「女」たちによるものだからだ、というのがこの作品の一つの回答だろう。「女」たちには世界を呪う権利がある。『ザ・ミソジニー』というタイトルは本作品から与えられたいわば解けない謎かけに違いないが、「女」たちに呪われるべきこの世界が自称した自虐的な自己言及だと考えれば、むしろストレートなタイトルと言えるのかもしれない。

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